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C型肝炎

C型肝炎およびC型肝炎ウイルスとは

C型肝炎とはC型肝炎ウイルス(HCV)の感染により起こる肝臓の病気です。肝臓は体に必要なタンパク質や栄養分の生成や貯蔵、不要となった老廃物や薬物の解毒など生きていく上で必要不可欠な機能をもっています。HCVに感染すると約70%の方が持続感染者となり、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと進行する場合があります。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ予備能力が高く、肝炎になっても自覚症状がないまま病気が進むことがあり、HCVの感染がわかれば症状がなくても検査や治療を検討する必要があります。

現在日本では約150万~200万人のHCV感染者がいると考えられています。しかし感染がわかっていない方やわかっていても通院されていない方も多いのが現状です。慢性肝炎、肝硬変、肝がん患者の75%がHCV感染者であり、年間3万人が肝がんにより死亡しているため、C型肝炎についての正しい情報を多くの方に知っていただくことが大切です。

C型肝炎の感染経路と感染予防

C型肝炎ウイルスは感染者の血液を介して感染します。しかしほぼ半数の方の感染源は不明のままです。過去の輸血や血液製剤の投与、臓器移植、適切な消毒をしない器具を使っての医療行為、民間療法、刺青、ピアスの穴あけ、麻薬、覚せい剤の回し打ち、感染者との剃刀や歯ブラシの共用などで感染の可能性があります。血液製剤が原因となった例の一部には、特定フィブリノゲン製剤あるいは特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎、いわゆる「薬害肝炎」としてC型肝炎訴訟和解に至ったものもあります。またごくまれですが出産や性交渉の際にも感染の可能性があるといわれています。しかし常識的な社会生活のうえで、他人の血液に直接触れることが無ければ、家庭や集団生活での感染のおそれはまずありません。握手や抱擁、食器の共用や入浴での感染はありません。HCV感染を理由に区別されるなどの不利益があってはいけません。

C型肝炎感染予防のためのワクチンはできていません。感染予防のためには他人の血液に触れないことが大切です。現在使われている輸血用の血液や血液製剤は、高い精度の検査がおこなわれているためまず感染はおこりませんが、1992年以前の輸血、1994年以前のフィブリノゲン製剤、1988年以前の血液凝固因子製剤には、ウイルスのチェックが不十分だった可能性があります。

C型肝炎の症状と経過

C型肝炎の症状

肝臓は「沈黙の臓器」とか「忍耐の臓器」などと言われますが、C型肝炎も慢性肝炎の段階ではほとんどの場合自覚症状がありません。また、自覚症状と言っても何となく体がだるいとか、疲れやすいとか、食欲がわかないといったあいまいな症状のことが多いのです。肝硬変に進行したり、肝がんができても症状がでない患者さんもたくさんおられますので、特に自覚症状がないから大丈夫だろうと自己判断するのは危険です。健康診断などの機会にできるだけきちんと検査をしていくことが重要で、血液検査を受けて初めてC型肝炎にかかっていることが判明したり、すでに肝硬変になってしまっていることがわかったりするケースも多々あるのです。

慢性肝炎が肝硬変まで進行してしまいますと、手掌紅斑と言って手のひらが赤くなってきたり、黄疸が出現したり、むくみが出やすくなったり、腹水がたまって妊婦さんのようにお腹が膨らんできたり、さらに鼻血など出血しやすくなったり、出血が止まりにくくなったりする症状がみられることがあります。また、肝がんを合併しても初期はほとんど無症状のことが多く、がんが進行すると腹痛や発熱、黄疸がみられるようになります。

C型肝炎の経過

C型肝炎ウイルスは血液を介して感染し、2~14週間の潜伏期間を経て急性肝炎を起こすことがありますが、急性肝炎を起こすことは比較的稀です。多くは不顕性感染ですが、60~80%の症例が慢性化すると言われています。慢性肝炎は約20年の経過で約30~40%の患者さんが肝硬変に進行し、さらに肝硬変の患者さんにおいて年率約7%の頻度で肝がんが合併すると言われています。また、肝硬変は食道静脈瘤を合併することも多く、破裂すると致死的なこともあります。肝硬変や肝がんが末期状態に進行しますと肝不全状態となり、黄疸や腹水貯留、意識障害が進行していきます。

C型肝炎の検査

まず、C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを調べる検査がHCV抗体検査です。HCV抗体陽性の場合、C型肝炎ウイルスに感染したことがあることを意味しますが、この場合現在もウイルスがいて持続感染をしている人と、以前に感染したことはあるが、治癒してウイルスのいない人が含まれます。そこで次にHCV-RNA定性検査といって、血液中にC型肝炎ウイルスの遺伝子が検出されるかどうかを調べる検査を行います。これが陽性ですと現在C型肝炎ウイルスに感染していることを意味します。また、C型肝炎ウイルスの種類を調べる検査であるセログループあるいはゲノタイプを測定し、さらにHCV-RNA定量検査によってウイルス量を調べて、これらを組み合わせてみることでインターフェロン治療の効果の予測をすることが可能です。

現在の肝炎の程度をみるのがAST(GOT)値やALT(GPT)値です。高値が持続しますと肝臓の炎症が強く、肝炎が進行し易いと言えますが、低いからと言って進行していないとは必ずしも言えません。慢性肝炎から肝硬変への進行を予測することは非常に重要で、それには肝臓で合成される血清蛋白であるアルブミン値や凝固因子の活性を示すプロトロンビン活性値など肝合成能の低下や、肝炎の進行に従って減少してくることが知られている血小板数の低下、肝の線維化の進行を示すヒアルロン酸値の上昇などを合わせてみていく必要があります。さらに腹部超音波検査やCT、MRI検査などの画像検査あるいは腹腔鏡検査によって肝臓の形態的な変化を調べ、肝生検と言って肝臓の組織の一部を採取して肝臓の組織学的変化をみる検査を必要に応じて実施して判断します。また、特に肝硬変においては肝がんの早期発見に努めることが重要ですが、肝画像検査の他に補助診断として肝がん特異性の高い腫瘍マーカーであるAFP、PIVKA-2の測定が有用です。

C型肝炎のインターフェロンおよびそれ以外の治療

C型慢性肝炎の治療のもっとも本質的な治療は、C型肝炎ウイルス(HCV)を体内から排除することです。現在では、インターフェロンを使わない内服薬だけの治療が登場し、「インターフェロンフリー」の治療として、2014年9月にわが国でも使えるようになりました。これが、1型に対する経口剤治療薬ダクラタスビルとアスナプレビルの2剤併用療法(24週間内服)です。

続いて、2015年3月には2型に対するソホスブビルとリバビリンの2剤併用療法(12週間内服)、2015 年7月には1型に対するソホスブビルとレジパスビル配合錠による治療(12週間内服)、2015年9月にはパリタプレビルとオムビタスビル、リトナビル配合錠による治療(12週間内服)が承認され、本格的なインターフェロンフリー経口剤治療の時代が到来しました。これにより、1b型の難治例の患者さんでも95%以上の人でウイルスを体内からなくすことが可能となっています。

しかし、体内からHCVを排除することができても、これまで悪くなってきた肝臓病そのものが完治したわけではありませんので、引き続き経過観察を受けることが重要です。とくに肝臓病が進行してしまった方の肝がん合併の危険性は、ひきつづき残っていると考え、定期的な超音波検査やCT・MRI検査などの画像検査を受けることが重要です。

また、これらの最新の治療法を受けられるのは、慢性肝炎と初期の肝硬変(代償性肝硬変)の患者さんに限られており、肝臓の障害が高度で低アルブミン血症や腹水、肝性脳症などの症状を伴う非代償性肝硬変の患者さんには現在のところ投与することができません。どの治療法を選択した方がよいかは、患者さんの状態に合わせて主治医とよく相談する必要があります。

C型肝炎の公費助成制度

C型肝炎の問題は、「国民が、自身のC型肝炎ウイルス感染の状況を認識し、その結果に基づき必要な診療を受けることが重要」とされています。このため、厚生労働省はさまざまな施策に取り組んでいます。その一環として、住民基本検診時の検査(一部無料)に加え、保健所や委託医療機関において肝炎ウイルス検査を無料で行なっています。

また、すでに感染が診断されている肝炎の患者さんについては医療費助成事業が開始されております。医療保険により肝炎ウイルスの除去を目的としておこなうインターフェロンフリー治療には、「健康局長通知」に基づき、所得に応じて、月あたりの医療費を軽減する目的で、医療費助成が受けられ、当院でも対応しております。詳しくは、お近くの保健所にお問い合わせください。