アレルギーの原因物質(アレルゲン)を少しずつ体内に吸収させることで、アレルギー反応を弱めていくアレルゲン免疫療法(脱感作療法)のひとつです。
従来、アレルゲン免疫療法はクリニックにその都度来院し注射による皮下免疫療法が中心でした。しかし、舌下免疫療法では注射の痛みが無いこと、自宅で投与できるため頻回の通院が不要なこと、そして全身におよぶ副作用の発現率が皮下免疫療法に比べて低いため安全面から現在注目が集まっています。
当院では保険診療によるスギ花粉症ならびにダニアレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法を行なっております。
舌下免疫療法はアレルゲンに対するアレルギー反応そのものを改善しますので、根治となる可能性があります。くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった鼻炎の症状だけではなく、眼の症状や皮膚の症状にも効果が期待できます。3年以上継続治療をされた方の約30%が根治となり、改善傾向の方も含めると約80%の方は効果を実感していただけるといわれています。(効果がない方も約20%存在します)
症状が完全に消失しなくても、薬を減量することができたり、薬の服用期間を短縮することができる可能性があります。
舌下免疫療法を行なった方は、免疫の過剰な反応が抑えられるため、治療を受けていない方に比べ、今後別のアレルゲンに感作される確率が低くなります。
- 12歳以上65歳未満で、検査でスギ花粉症またはダニアレルギー性鼻炎と診断された方
- これまでの投薬治療で十分な効果が得られない方
- 運転業務に従事している等で、抗アレルギー薬の副作用で眠気が出ると困るという方
- 将来妊娠を希望しており、抗アレルギー薬の内服を避けたい方(妊娠中は開始できません)
- 抗アレルギー薬の内服量を減量、内服期間を短縮したい方
舌下免疫療法は1日1回毎日、舌下にアレルギーの原因物質を含んだ薬剤を投与し、口腔内の血管から体内に吸収させることで、アレルギー反応を起こしにくい体質に変えていく方法です。
投与する薬剤の濃度が一定まで上がれば、1回/1~2ヶ月の通院で治療が可能ですが、アレルギー反応を起こさない体質になるまでは3~5年の治療継続期間が必要とされています。
スギ花粉やダニにアレルギーをお持ちの患者さんにそのエキスを含んだ薬剤投与して治療を行いますので、当然のことながらアレルギー反応が起きる可能性があります。重篤な場合ではアナフィラキシーショックとよばれる救急搬送されるような強いアレルギー反応が生じる可能性があります。
ただし、これまでの報告では、舌下免疫療法にともなう重篤な副反応は極めて稀であり、従来の注射による皮下免疫療法よりもかなり安全とされています。
舌下免疫療法によるアナフィラキシーショックは投与100,000,000回に1回との報告があります。また、ショックに至るような事例は通常の服用例ではなく、過量服用や体調の悪い時が多いといわれています。
ごく軽度の副作用も含めて、下記のような報告があります。
- 1. 嘔吐、腹痛、下痢などの腹部症状
- 2. 口内炎、口唇の痒み・腫れ・感覚異常などの口腔口唇症状
- 3. 蕁麻疹、喘息発作、鼻炎、眼の痒みなどのアレルギー症状
- 舌下免疫療法では副作用に伴う死亡例の報告はありません。
- 薬剤が直接触れる口腔内には軽症を含めると高い確率で副反応が出現しますが、その多くが自己管理可能で、治療を必要としません。
- 副作用の多くは投与初期、薬の増量期に起こることが多いです。
- 初回投与は必ずクリニック内で行い、投与後30分は副作用の有無を経過観察をします。
- スギ花粉症に対する薬剤:スギ花粉舌下液
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舌下にスギ花粉を原料としたエキス(冷蔵保存)を滴下します。舌下で2分間保持し、その後は飲み込みます。服用後5分間はうがい・飲食を避け、服用の前後2時間は激しい運動・入浴は避ける必要があります。
治療開始から2週間は毎日徐々に薬剤を増量していき、3週目からは一定量の薬剤を毎日舌下投与します。1回目の舌下投与は必ずクリニックで行ないますが、以降は毎日1日1回自宅で行います。
薬剤はグリセリン含有していますので、口腔内に含んだ際にピリピリ感を感じたり、飲み込んだ後に腹部症状を自覚する場合があります。腹部症状がひどければ、2分間口腔内に保持したあと、薬剤を飲み込まずに吐き出す方法をお勧めしております。
効果発現までに少なくとも8~12週間は必要とされており、スギ花粉飛散が始まる3ヶ月以上前から治療を開始することが必要です。6月から11月中までの間に治療開始します。スギ花粉飛散期はスギ花粉に対する患者さんの過敏性が高まっていることから、12月に入ってしまうとスギ花粉の飛散が終了する6月までは新たに治療を開始することはできません。
- ダニアレルギー性鼻炎に対する薬剤:ダニ舌下錠
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舌下に無味無臭の舌下錠(室温保存)を入れます。舌下に1分間保持しておき、その後は飲み込みます。服用後5分間はうがい・飲食を避け、服用の前後2時間は激しい運動・入浴は避ける必要があります。
治療開始から1週間の間は黄色のラベルの錠剤を服用し、2週目からピンク色のラベルの錠剤を服用します。1回目の舌下投与は必ずクリニックで行ないますが、以降は毎日1日1回自宅で行います。
体調の悪い時でなければ、年中いつでも治療開始できますが、多くのダニアレルギーの患者さんはダニの増殖する梅雨時やダニの死がいが多く発生する秋口に症状が増悪するため、アレルギー症状が強い時期は避けた方が安心です。
舌下免疫療法は3~5年間、治療を継続することが推奨されています。数年間の治療を行い、アレルギー症状の治癒や寛解が得られたら、一旦治療が終了となりますが、治療を終了すると、効果が減弱し将来的に症状が再燃する場合もあります。その場合はまた舌下免疫療法の再治療を行うことで、速やかに治療効果を得られるとの報告もあります。治療の中断・終了は自分で判断せず、必ず医師にご相談ください。
- 1. スギやダニに対するアレルギーを検査で証明できない方
- 2. スギやダニの単独ではなく、他のアレルゲンにも高い反応がある方
- 3. 重症喘息を合併している方
- 4. 重症アトピー性皮膚炎の方
- 5. 重症心疾患や重症肺高血圧症の方
- 6. 悪性腫瘍や自己免疫性疾患や免疫不全の方
- 7. 妊婦・授乳婦の方
- 8. 本剤投与でショックを起こしたことのある方
- 9. ステロイドや免疫調整剤剤を服用中の方
- 10. ベータブロッカー、三環系抗うつ薬、MAO阻害剤を服用中の方
診察の際には、既往症や服用中の薬剤についてお知らせ下さい。
クリニックでの診察料と調剤薬局での処方料と合わせた金額が、
3割負担の患者さんで3500円前後です。
その他必要に応じて検査料や、治療薬の併用で処方料などが加算される事があります。