慢性胃炎は、自覚症状としては空腹時や夜間の胃の痛み、胸焼け、胃のもたれ、腹部膨満感、げっぷなどが挙げられ、これらが不定期だったり不明確だったりするのが特徴です。また、自覚症状が無く、定期健康診断で初めて分かることも少なくありません。慢性胃炎は表層部のただれ(びらん性胃炎)から始まり、長年のうちに胃粘膜細胞が活力を失って胃腺が萎縮した状態(萎縮性胃炎)に移行すると考えられています。
慢性胃炎にはヘリコバクター・ピロリ菌という細菌の感染の関わりが多いことが明らかにされてきました。ヘリコバクター・ピロリ菌は、強酸性の胃液に耐えられる細菌で、感染すると、胃の粘液にすみついて胃粘膜に有害な物質を作り出すことから、慢性的に胃炎を引き起こすのです。慢性胃炎、十二指腸潰瘍、胃潰瘍、さらには胃がんの患者さんはこの菌に感染していることが多く、こうした胃・十二指腸の疾患との深い関わりが指摘されています。
慢性胃炎の症状は様々で、くり返す、あるいは持続する上腹部不快感・重圧感、心窩部痛、悪心・嘔吐、腹部膨満感、胃もたれ感、食欲不振が現われます。
なかでも多い症状は、上腹部不快感、心窩部痛、腹部膨満感で、多くの場合、これらの症状が重複して現われます。
慢性胃炎は症状と胃カメラ検査によって診断されるのが一般的ですが、不思議なことに胃カメラ検査によって慢性胃炎と診断されたにもかかわらず、自覚症状のない患者さんが40~50%にも上ることが知られています。
自覚症状がないのに、健診の胃カメラ検査あるいは胃バリウム検査で慢性胃炎と診断される患者さんも多くいます。
慢性胃炎の症状は様々で、性状によって胃の病的状態が推察されます。上腹部不快感・重圧感は胃の炎症の一般的症状で、炎症が増強すると心窩部痛が現われます。
慢性胃炎には胃の運動機能の異常も伴います。その代表的症状は、胃から小腸への食物の輸送機能が遅延するための腹部膨満感、胃もたれ感であり、胃機能の異常亢進による吐き気・嘔吐と考えられます。
胃カメラ検査で胃粘膜の萎縮所見を認めれば、容易に診断がつきます。萎縮のある胃粘膜は、表面が滑らかではなく血管が透けて見える所見がみられます。正確な診断には、組織の一部を採取して調べる生検による病理学的検索が必要です。
慢性胃炎はヘリコバクター・ピロリ菌の有無、炎症細胞浸潤の程度、萎縮の程度などから、シドニー分類と呼ばれる国際的な胃炎分類法に基づきスコア化されています。
先ず、ヘリコバクター・ピロリ菌が陽性であれば除菌治療を行っております。早期の段階で除菌治療が成功すれば、萎縮性胃炎の進行を抑制することが可能でしいては胃がんのリスクを低下させることが知られています。除菌後にも自覚症状が残存している患者さんには制酸薬、胃粘膜保護薬、消化管機能改善薬を症状に合わせて処方しております。