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クローン病

クローン病(Crohn's Disease)とは

大腸および小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)といいます。
クローン病も、この炎症性腸疾患のひとつで、1932年にニューヨークの内科医クローン先生らによって限局性回腸炎としてはじめて報告された病気です。
クローン病は主として若年者にみられ、口腔に始まり肛門に至るまでの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍(粘膜が欠損すること)、狭窄が起こりえますが、小腸の末端部が好発部位で、非連続性の病変(病変と病変の間に正常部分が存在すること)が特徴です。それらの病変により腹痛や下痢、血便、体重減少などが生じる病気です。

この病気の原因はわかっているのですか

日本では1940年ごろから「非特異的限局性腸炎」として紹介されたものの、まれな病気として一般にはあまり知られていませんでした。1975年に旧厚生省の研究班が発足し、クローン病の診断基準が作成され、全国調査が行われるようになりました。
クローン病の患者数の推移を医療受給者証交付件数でみると1976年には128件でしたが、その後増加し続け、近年では毎年おおよそ1,500人ずつ増加がみられ、2009年度には30,891人の患者さんが登録されています。したがって人口10万人あたり約23.3人のクローン病患者さんがいることになりますが、欧米に比べると10分の1前後です。

この病気はどのような人に多いのですか

10歳代~20歳代の若年者に好発します。発症年齢は男性で20~24歳、女性で15~19歳が最も多くみられます。男性と女性の比は、約2:1と男性に多くみられます。
世界的にみると地域的には先進国に多く、北米やヨーロッパで高い発症率を示します。環境因子、食生活が大きく影響し、動物性タンパク質や脂肪を多く摂取し、生活水準が高いほどクローン病にかかりやすいと考えられています。喫煙者は非喫煙者より発病しやすいと言われています。

この病気は遺伝するのですか

クローン病は人種や地域によって発症する頻度が異なり、また家系内発症もみとめられることから、何らかの遺伝的因子の関与が考えられていますが、クローン病を引き起こす原因となる特定の遺伝子はみつかっていません。現在のところ、単一の遺伝子異常だけで発症するのではなく、いくつかの遺伝子異常と環境因子などが複雑に絡み合って発症していると考えられています。

この病気ではどのような症状がおきますか

クローン病の症状は個々の患者さんによって非常に多彩で、侵された病変部位(小腸型、小腸・大腸型、大腸型)によっても異なります。その中でも特徴的な症状は腹痛と下痢で、半数以上の患者さんでみられます。さらに発熱、下血、腹部腫瘤、体重減少、全身倦怠感、貧血などの症状もしばしば現れます。またクローン病は瘻孔、狭窄、膿瘍などの腸管の合併症や関節炎、虹彩炎、結節性紅斑、肛門部病変などの腸管外の合併症も多く、これらの有無により様々な症状を呈します。

この病気の診断はどのようにおこなわれるのですか

まず、患者さんの症状からクローン病を疑い、一般的な血液検査、糞便検査、さらに消化管X線造影検査、内視鏡検査をすることによって診断します。その中でも消化管の病変を見つけだすのにX線造影検査(注腸造影、小腸造影)、大腸カメラ検査による生検病理診断が重要です。

この病気にはどのような治療法がありますか

クローン病の治療は、いまだ原因が不明であるために根本的な治療法がないのが現状です。しかし、患者さん自身がクローン病を正しく理解し、治療を受ければ多くの場合は「寛解」状態になり、それを維持することが可能です。その基本はあくまでも腸管に生じた炎症を抑えて症状を和らげ、かつ栄養状態を改善するために、急性期や増悪期には栄養療法と薬物療法を組み合わせた内科的治療が主体となります。内科的には治療できない腸閉塞、穿孔、大量出血などが生じた場合は手術が行われます。

栄養療法・食事療法

栄養状態の改善だけでなく、腸管の安静と食事からの刺激を取り除くことで腹痛や下痢などの症状の改善と消化管病変の改善が認められます。
栄養療法には経腸栄養と完全中心静脈栄養があります。経腸栄養療法は、抗原性を示さないアミノ酸を主体として脂肪をほとんど含まない成分栄養剤と少量のタンパク質と脂肪含量がやや多い消化態栄養剤やカゼイン、大豆タンパクなどを含む半消化態栄養剤があります。完全中心静脈栄養は高度な狭窄がある場合、広範囲な小腸病変が存在する場合、経腸栄養療法を行えない場合などに用いられます。
病気の活動性や症状が落ち着いていれば、通常の食事が可能ですが、食事による病態の悪化を避けることが最も重要なことです。一般的には低脂肪・低残渣の食事が奨められていますが、個々の患者さんで病変部位や消化吸収機能が異なっているため、主治医や栄養士と相談しながら自分にあった食品を見つけていくことが大事です。

内科治療

主に5-アミノサリチル酸製薬(ペンタサやサラゾピリン)、副腎皮質ステロイド(プレドニン)や6-メルカプトプリン(ロイケリン)やアザチオプリン(イムラン)などの免疫調節薬が用いられます。寛解を維持するために5-アミノサリチル酸製剤や免疫調節薬が使われます。最近では瘻孔合併などの難治の患者さんでは抗TNFα受容体拮抗薬(レミケード)が比較的早期の段階で使用されるようになってきています。薬物治療ではありませんが、血球成分除去療法が行われることもあります。

外科治療

著しい狭窄や穿孔、膿瘍などを経過中に生じ、内科的治療でコントロールできない場合には手術が必要となることがあります。手術はできるだけ腸管を温存するために小範囲切除や狭窄形成術が行われます。

開発中の治療薬

近年、抗TNF-α抗体が開発され、その有効性が高いことが明らかにされて以来、クローン病の病態に基づく治療薬の開発が欧米を中心に精力的に進められています。特にクローン病ではTリンパ球がTh1型に傾き炎症反応を引き起こす物質が過剰産生されていることから、これを是正するために、インターロイキン12やインターフェロンγなどの抗体治療薬の開発が始まっています。また、抗TNF-α抗体も、抗体反応を起こさないことを期待して、完全ヒト型の抗体製剤アダリムマブ(ヒュミラ)が使用されるようになっています。

この病気はどういう経過をたどるのですか

再燃・再発を繰り返し慢性の経過をとります。完全な治癒は困難であり、症状が安定している時期(寛解期)をいかに長く維持するかが重要となります。長い経過の間で手術をしなければならない場合も多く、手術率は発症後5年で33.3%、10年で70.8%と報告されています。また、定期的に血液検査や大腸カメラ検査を受けることも必要となります。